Napの考えること

by Nap-takemura

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憧れ。

考えること(その68)

村上春樹のエッセイを読んでいると、たくさんの示唆に富んだ言葉が絶妙なユーモアを交えて書かれていて止まらなくなる。なぜこんなに日本だけではなく世界中の人々に彼の書物が支持され読まれているのか、という疑問が解けた気になる。

物事の見方や創作に対する自身の考え方等々。それこそ職業や性別年齢をも合わず、ああなるほどな、という思う箇所が多く、あっという間に読みすすんでいってしまう。終わりのない世界の紛争や日本の今の憂える状況についても、わりにはっきりと自分の考え方を書いているところにも信念の強さを感じる。

僕が二十代初めの頃、ふたつほど年上の先輩がいて、その話し方や仕草、ちょっとした会話の中に自分にはない大人を感じさせる人がいて、なんとなく憧れのような気持ちを持ったことがある。その当時は無意識だったが、その先輩の顔つきやタバコの吸い方やちょっとした仕草が頭に残って、真似てみたりしたこともあった。でも一番に真似たいのはその人の持ち合わせた性格(というか人間性というべきか)だったのだが、それは当然に僕は別の人間だから無理なわけで。いつかそのような子供じみた気持ちは消失していった。

村上春樹の本を読んでいて、ふとそのことを思い出した。若い頃、こんな大人、あんな男になりたい。そう思える人間にたくさん会うことができた人は幸せなのではあるまいか、と。「憧れ」は、なにも夢の世界の物語だけではなく、現実に生きるこの世界でも必要なものだ。村上春樹は小説家だけれど、同じ創作する人間として、ひとりの人間として、自分にはないものが多い分、その生き方、思想、生き様に憧れに似た気持ちが湧き出る。そして同じ気持ちになる人間が世界中にたくさんいることを理解した気にもなった。

音楽に感動し、音楽を奏でることに興味を持ち、自分で作った歌に愛着を持ち、どこかで歌って、誰かに伝わったことを自覚したとき、僕は勝手にミュージシャンの仲間入りしたと思っていた時期があり、そのスタート地点もやはり、「憧れ」だった。いい歌だなあ、から始まり、俺もこんな世界に生きていたい、と願い、胸の名札に「音楽家」と記すんだと自分に誓い、それを自分の最終の最大の目標に定め、生きた時代を思い起こす。

無責任のようなことを言わせてもらえば、「憧れ」に思えるような大人にこの現代の日本で巡り会うことは簡単ではない気がする。現に僕はそんな人間にずいぶん長い間出会っていないなあ・・・、まあ、あくまでも自分の尺度での「憧れ」る人間という意味ですからどうか悪しからず。

シンガーソングライターとして強烈な個性を放つ稀有なアーティスト、「竹原ピストル」さんに以前、僕の拙いインタヴューの際、「ほぼ毎日のようにライブをしてますが、どのようにしてモチベーションを保つのですか?」 と質問しました。すると彼はすかさず、「僕の中にモチベーションという言葉はないですねえ・・・」、と静かに答えました。一瞬、僕はその答えに言葉を失い黙ってしまいましたが、彼はそんな空気を知ってか知らずか、「いつも好きなことをやっていますから」と間髪いれずに答えました。ちょっとニュアンスは違ったかもしれませんが。それに似た言葉が、村上春樹のエッセイにも何度か出ていました。そのたびに、ああそうか、やっぱ、そうなんだよねぇ・・・、とひとり感じ入ってしまいました。

話は戻りますが、この村上春樹の本を読みながら、自分のどこかが、何かが、間違っているのか? と迷路に入ったウサギのごとく立ち止まる一方、結局、僕という人間のアップデートやバージョンアップは自分にしかできないのだよ、完了させることができるのは自分しかいないんじゃあないのか?、という結論に達するのであります。

誰かの音楽に感動したりするのはシンプルで直感的な分、正しいと思うし、自分が作った音楽に自分以外の誰かの心を動かすことができたかどうか、そしてもしその感触が薄かったのであれば(あくまでも創作という次元の話ですが)、まだまだ、未完成の域の音楽なのだよ、と。そう僕は自分に言い聞かせたい。

なんだか今回のこの文章は、村上春樹氏のことが主になってしまいましたが、彼の本が好きか嫌いかはともかく、現代に生きる様々な個々の人間への寛容な眼差しに共鳴もしたし、創作者としてのあるべき「カタチ」のようなもののヒントがそこかしこに溢れかえっていて非常に驚いた。いまさらながらですが、村上春樹という作家の真価のようなものを少しだけ垣間見た気がいたします。

同時に、僕自身、まだまだ追求するべき音楽がたくさんあるのだということも肝に銘じることができましたし、(無理やりな締めですが)、日々接する多くのミュージシャンにもこの気持ちがちょっとでも伝われば嬉しいです。

さてさて。だいぶ肌寒い夜も増え、秋の気配どころか冬の足跡さえ感じる今日この頃ですね。だけれど、ノロウイルスもインフルエンザにも負けずにバッタバッタと気合いで投げ倒しながら、年末にはきっと、みんな笑顔で迎えられますように! 残り二ヶ月を気合いで乗り切りましょうぞ。 

長文、乱文、お読みいただき感謝です。またNapの会場でお会する日を楽しみにしております。Nap竹村
































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by Nap-takemura | 2015-10-25 23:42